iTestingでは特定の受検者層を対象と検査ではなく広くみんなに受けやすい検査を目指しています。そのために行った活動の一つが検査予約サイトの多言語化です。日本語話者でも日本語以外の言語を話す人でも受けやすい検査を目指しました。
- どんな言語を選ぶか?
- 外国籍住民の割合の高い国籍、言語を検討
- 比較的新しい外国語話者コミュニティを対象に選ぶ
- 広報カードを配布した先の国際交流協会や大学、日本語学校などで希望する言語を聞き取る。ミャンマー語とネパール語のリクエストが多くあった。今後、人口動態の変化と見比べながら検討する価値があろう
- 留意点として翻訳された言語のコミュニティは、性感染症に罹患している人が多いとみなされるリスクがあり、コミュニティのメンバーはそのようなことに敏感である。よって、HIV陽性者が多い言語を翻訳言語として選ぶのではなく人口分布に合わせた言語選択が重要である
- iTesting@名古屋の場合
- 愛知県内でアウトリーチの可能性が高い言語(話者数が多いと推定できる言語)として、英語、ポルトガル語、スペイン語をまず選択
- その後、近年住人数が増えているベトナム語を追加
- そして、HIV専門医師の印象と住民数の増加が合致した言語としてインドネシア語と中国語を追加
- 最終的に、外国語の翻訳でカバーできていない層のためにやさしい日本語で情報を発信した
- 翻訳のコツ
- 機械翻訳にかける前に、日本語原文を手直しすることによって、翻訳の精度をあげることができまる。この作業を前編集(pre-editing)と呼ぶ。
以下、プリエディット(前編集)について吉田・今橋・金子(2023)から引用して説明する。 - pre-editingについて
- 1) 句読点を入れる、2)主語・目的語を明示する、3)固有名詞をTT言語(英語)で書くことがニューラル機械翻訳におけるプリエディットで有効(Hiraoka & Yamada, 2019)
- 1) 情報の付加、2)修飾関係を明確にすること、3)短い文の使用、4)標準化(Miyata & Fujita, 2021)
- 実例プリエディット(PDF)
- 機械翻訳にかける前に、日本語原文を手直しすることによって、翻訳の精度をあげることができまる。この作業を前編集(pre-editing)と呼ぶ。
- 広報の仕方と注意点
- 日本人を含めたすべての人を対象とした検査会であることを伝えるのが効果的である。特定の言語のみの翻訳だと、翻訳された言語のコミュニティへの攻撃とみなされることがあるので、注意が必要。
広報資材は国際交流協会などで自由に持ち帰れる場所に置いてもらうようにする。
協力団体からは、継続して広報を続けることで外国語話者コミュニティの間の認知度を上げられるので、継続してほしいというリクエストも届いていた。
HIV感染予防啓発の活動を行っている団体の協力を得ることが非常に効果的である。 - 多言語広報資材の作成
- 多言語広報カード
- 多言語検査会案内チラシ・ポスター
- 各言語字幕付き動画 検査会案内動画とHIV啓発動画
- 郵送で以下の団体に広報資材を送付
- 県内の国際交流協会
- 市の多文化共生に関する部署
- 市の感染症課を通して保健所
- 日本語学校、教室
- 大学
- その他
- SNS (Facebook、X、Instagramで多言語で検査会の案内と資材の拡散)
- 日本人を含めたすべての人を対象とした検査会であることを伝えるのが効果的である。特定の言語のみの翻訳だと、翻訳された言語のコミュニティへの攻撃とみなされることがあるので、注意が必要。
- やさしいにほんごのコツ
- やさしいにほんごとは?
- 外国語翻訳との違い
【参考文献】
- Miyata, R & Fujita, M.(2021).Understanding pre-editing for black-boxneuralmachinetranslation.Proceedings of the 16th conference of theEuropean Chapter of the Association for Computational Linguistics(EACL), pp. 1539-1550. https://doi.org/10.48550/arXiv.2102.02955
- Hiraoka, Y. & Yamada, M. (2019). Pre-editing plus neural machinetranslation for subtitling: Effective pre-editing rules for subtitling of TEDtalks.In Proceedings of the Machine Translation Summit XVII, pp. 64–72.
- 吉田理加・今橋真弓・金子典代(2023).「無料匿名性感染症検査会iTesting@Nagoyaにおける多言語アウトリーチ実践報告:「プリエディット(前編集)」の工程に着目して」日本通訳翻訳学会第24回年次大会
